カテゴリー:ことわざ、故事成語、名言、名句
匙を投げるとは、スプーンを投げるという意味だが、「飯がまずい」と言われた奥さんが旦那にスプーンを投げつけるとか、きらいな食べ物を無理やり食べさせられた子どもがキレて匙を放り投げるといったような家庭内のいざこざをいったものではなく、昔の医者が薬の調合をするための匙を投げ出す、つまり治療を放棄する、あきらめる(要するに患者が死にゆくのにまかせる)という状況をいう慣用句である。「匙を投げる」は、われわれ社会に起こるさまざまな事象を医者と患者に見立てて、例えば「将来立ちゆかなくなることが予想される国民年金について行政当局は、『自分の取り分さえ確保しておけば、あとはどうなってもいいか』と、とっくの昔に匙を投げているのではないだろうか」などと用いる。(CAS)