コメディとは、人間の「笑う」という感情表現に頼った演劇のジャンルで、日本語では「喜劇」と訳され、認めたくはないが、われわれ救いようのない人間のつまらない人生そのものをわれわれ救いようのない人間自身が見て笑いとばすという皮肉な構造を持つ演劇である。
英語のcomedyが古代ギリシャの喜歌劇komoidia(コーモーイディアー)を語源としているように、コメディは由緒正しい演劇であるにもかかわらず、一般的な演劇やドラマに比べて一段低い地位に置かれている。これは人間が、足の裏をくすぐったり、ヘン顔を見せたり、裸踊りをしたり、お下品な話をしたり、おやじならだれでも思いつくダジャレを言ったりするだけで、安易に笑う傾向があり、笑いという感情表現そのものがあまり上等なものではないと考えられているためかと思われる。しかし、その笑いをエンターテインメントとして人々に提供しようとすると話は別で、人間のどこかの感情にヒットすればよい普通の演劇に比べて、間口が非常に狭い難しいジャンルであり、多くのコメディは「スベる」という悲劇の結末を迎えることになるのである。(CAS)