けだもの(獣)とは、毛の生えた動物のこと。つまり、ほ乳類のうち体毛の濃いものをいう。「けもの」も同じ意味だが、「けだもの」と言ったほうがより意味が強く、野獣のように人間性の欠けた人物に対して投げかける非難の言葉としても用いられる。特に暴力的な男性について言われることが多く、女性の場合、よほどのことをしなければ「けだもの」とは言われない。やはり「けだもの度」は、意味もなくひげなどが生えている男性に強く、体毛の濃さに関係あるのかと思わせるが、そのあたりの研究成果に関しては残念ながら事情に疎くここで述べるに値しない。
「けだもの」は「毛」「だ」「物」という語の組み合わせでできていて、要するに「毛の物」「毛の生えている物」といったような意味。「だ」は「くだもの」が「木だ物」というように所有や所属などを表す「の」と似たような意味かと思われるが、使われているのはこの「けだもの」と「くだもの」くらいであるという謎の言葉である。こうなると、中国語で「幸福的家庭(幸福な家庭)」のように名詞の修飾語を作る「的(日本語読みでは「だ」に近い)」が借用されているのではないかとも思えてくるが、もちろんこんな説は学界では相手にされない。(CAS)