黒幕とは、黒い色の幕(カーテン)という意味だが、歌舞伎で場面の変わり目に舞台を隠したり、夜の背景に使う黒い幕のことをいい、比喩的に、表面に出ず陰で人々を操る実力者を言い表し、見た目はもうろくしたじいさんのように見えながら「彼は目障りですねえ」の一言で政治家を闇に葬ってしまえるような人物を指して、「政界の黒幕」などと用いる。
「陰の実力者」を「歌舞伎の黒幕」に例えるのはわかるようなわからないような比喩であり、同じ歌舞伎であれば「暗躍する」という意味で「黒子(くろこ)」に例えた方がよさそうにも思える。しかし黒子は、黒い衣装に身を包んではいるものの観客から丸見えで(そこがねらいでもあるが)、役割といったら役者の着替えを手伝う程度の使いっ走りなので、「黒幕」という闇の実力者を言い表すには力不足なのだろう。(CAS)