鏡餅とは、鏡のような(鏡の形の)餅というほどの意味で、正月に神仏に供えられる餅のことをいう。大小のパルメザンチーズ形の餅を二重に重ねた形をしていて、天皇家の神器である円形の鏡をかたどったものだという。しかし、いまとなってはどこから見てもその形は鏡には見えず、重ねて置く理由もいまいちよくわからない。餅も鏡も、古くから神前に供えられていたものなので、供えるほど立派な鏡が家にない貧乏な武士たちが、安上がりな餅で「鏡も供えたことにしちゃえ」と兼用してしまったといったところがおそらくその由来であるに違いない。また、見た目の印象はむしろ、とぐろをまいたヘビといった方が適切で、事実、これをヘビを象徴したものだとする説をとなえる研究者もいる。
鏡餅の語源には他に、お飾り用の餅「飾り餅」がなまったものだという説もある。鏡餅は通常、餅単体では供えられず、ダイダイ(ミカンの一種だが、苦くてとても食えたものではなく、マーマレードの原料などにされる)やゆずり葉などでうやうやしく飾りつけられるので、語源としては自然に感じられるが、「飾り」から「鏡」へという転訛のしかたに無理があるとされる。(CAS)