蛾とは、気色の悪い芋虫や毛虫が蝶々になるのを楽しみにしていたら、「こんなんなっちゃいました」という、全身が毛羽立った気色の悪い虫。生物学的にはチョウの仲間のうち、きれいなチョウを除いたものを全てガというのだから、人々を残念がらすのも無理はない。もっともアメリカ人などは、色や柄のきれいなガを美しいと思うらしいから、世の中捨てる神あれば拾う神ありというものである。
日本では古く、蛾一般をヒヒル(ひらひら飛ぶからか?)と呼び、また、燈火に集まる種類のガをヒトリムシ(火取虫)と呼んでいた。特に、火の中に飛び込んで焼け死んでしまう蛾は、そんなおっちょこちょいで向こう見ずな生き物もめったにいないことから、一途な恋に身を焦がしてもだえる身を表現する詩的なシンボルとして、和歌の材料に重宝された。(CAS)