この辞典の使い方>「か」で始まる言葉>亀の甲より年の劫の意味、語源
カテゴリー:ことわざ、故事成語、名言、名句
亀の甲より年の劫(亀の甲より年の功)とは、年長者の経験の豊かさを高く評価することわざであるが、亀の甲羅を意味する「亀の甲」と、人間の長寿を意味する「年の劫」との関係を理解している人は少なく、「万年生きても少しも進歩しない亀の甲羅に対して、経験や知識を蓄えて進化する人間の長寿は貴いのだ……」などと、誰もがいい加減な解釈をしてなんとなくわかったような気になっている。実際のところはどうかというと、「年の劫」の「劫(こう)」は仏教起源の言葉で、非常に長い年月を表すが、「亀の甲」は「甲」と「劫」という語呂合わせで持ち出されただけの(要するにラップミュージックみたいな)言葉らしい。しかも、古くは「甲」は「かふ」と、「劫」は「こふ」という読みがあてられ(それぞれ、開音(かいおん)と合音(ごうおん)という)、読み方が違う字であったが、江戸時代になってそんな区別がごちゃまぜになったため成立したのが「亀の甲より年の劫」ということわざだという。そんなわけだから、われわれがどんな勝手な解釈を加えようとおかまいないようなもので、年寄りが頑張ってちょっといいところを見せたようなとき、「さすが亀の甲より年の劫ですね」などとおだてて小遣いをせびるという使い方さえ間違えなければ、万事OKなことわざなのである。(CAS)