カテゴリー:住文化、住環境、建築、インテリア、調度品
縁側とは、和風住宅で座敷の庭などに面した側に設ける廊下のような細長い板敷きの部分。「廊下のような」と言ったのは、よほど大きい家では部屋と部屋に架け渡して廊下の役割をすることもあるが、本質的には廊下の役割を期待されていないからである。では、縁側にどんな役割があるかというと、なんとも微妙な位置づけの場所で、①座敷の畳に直射日光が差し込まないように設けたもの、または、②夏の暑さや冬の寒さを和らげるサンルームのような役割をもつところ、あるいは、③平安時代の寝殿造(しんでんづくり)の建築において部屋の周りに庇(ひさし)と呼ばれる周縁部分を設けたことの流れで設置されているところ、さらには、④ばあさんとネコがお茶を飲みながら(ネコは飲まないけれども)日向ぼっこをする場所、そして田舎では、⑤ばあさんとネコが日向ぼっこをしていると、近所のおっさんや宅配便のあんちゃんや儲け話を持ち込んでくる怪しげな男が勝手に上がり込んでひととき茶飲み話をして帰ってゆくという、つまり室内と屋外の中間に位置する緩衝地帯のような役割を担っているところ、などが考えられる。
言葉としての「縁側」は、「縁」も「側」もいずれも端っこという意味で、いわばパンの耳みたいに「なくてもいい」ようなところであり、洋室が主流となった現代の住宅では、そんなあいまいな部分を設ける余裕もなく、ばあさんとネコが日向ぼっこできる幸せな場所はなくなろうとしている。(KAGAMI & Co.)