隠居とは、隠れて住まうという意味で、家や家業の代表権を後継者に譲った高齢者のことをいう。江戸時代に盛んになった制度で、この定義通り、年を取ってもしぶとく生きていること、譲るに足るだけの資産を保有していることが「隠居」と呼ばれる条件であり、ほとんどの年寄りはもうろくして仕事を引退しても、ただの「じいさん」と呼ばれるにすぎない。なお、江戸時代には家の代表権は男が握っていたので、女はどう年を取ってもだれもが「ばあさん」としか呼ばれなかった。
隠居には、代表権を完全に後継者に譲った完全隠居タイプと、引退後も家業に口を出し続ける半隠居タイプがある。後者は、天皇に対する上皇、江戸幕府の将軍に対する大御所、現代の企業における会長、顧問職など、役立たずの後継者をバックアップするための日本の伝統的な権力構造として生き続けている。(CAS)