一本取るの「一本」は、剣道や柔道の試合において有効な攻撃が決まることをいう。「一本取る」はそんな攻撃を決めるということだが、日常生活で、議論して相手を言い負かすという意味の慣用句として用いられている。英語でも、フェンシングの試合で有効な攻撃を意味する「touché」(トゥシェ:フランス語)が、同じ用途で使われている。ただし、日本語でも英語でも、「一本取る」という言い方は、深刻な議論で理詰めで相手を言い負かすというより、しゃれた言い方で相手をやりこめ、やられた方も薄笑いを浮かべながら「これは一本取られましたな」というような、あまりダメージを受けないやりとりについて用いる。考えてみれば、真剣勝負だったら一本取られれは死んでしまうが、剣道でもフェンシングでも「やられちゃったーっ」で済むので(当人はもう少しシリアスだとは思うが)、日常のこの使い方は誤っていないのだろう。(CAS)