一所懸命とは、中世の武士が与えられた所領(一所)を命懸け(懸命)で守ることをいったもので、そこから全力をあげてものごとに取り組む意味として使われるようになった言葉。「一所」が「一生」と取り違えられて「一生懸命」という言葉が生まれ、誤用のまま長らく使用されて定着し、いまでは「一所懸命」より多用されている。漢字の意味からみると「一生懸命」では、「一所懸命」のもつ「一つの仕事に懸けて、一点に集中して」というニュアンスは薄れる(本来が誤用から生まれたので、漢字の意味を考えるのはあまり意味がないとはいえるが)。一方、言葉の音からは「イッショウケンメイ」の方が「イッショケンメイ」より「本気度」が高いように感じられる(「イッショ」がみんなで一緒の「一緒」と混同するせいかもしれない)。しかし、多くの人が「一生懸命に頑張ります」などと口にしながら、実はたいして気持ちがこもっていない場合が多いので、あまり本気になって追求しないほうがよいという意味で、「一生懸命」でも「一所懸命」でもどっちを使ってもかまわないというのが実情ではないかと思われる。(CAS)