行脚(あんぎゃ)とは、仏教の僧侶が修行のために各地をめぐり歩くことをいう。漢字の「行脚」を「あんぎゃ」と読むのは、日本における漢字の音読みのしかたの一種である唐音(とうおん)によるもの。その後、仏教の修行でなくても、俳人松尾芭蕉の旅のように、目的をもって諸国を旅することも行脚と呼ぶようになった。自分の「脚」で歩いて「行」くから「行脚」というわけだが、最近では、ワゴン車に乗ってレコード店を回る演歌歌手のプロモーション活動なども「全国行脚」と呼ばれているようである。しかし、昔の「行脚」が仏教修行の一環であったり、地方のパトロンを訪ね歩く厳しい旅であったりしたように、現代のそれも、飛行機のファーストクラスで飛び回る全国公演などもってのほか、せめて田舎のレコード店でみかん箱をステージにして歌うとか、誰も歌なんか聞いていないしょぼいキャバレーでの営業(いまどきそんなキャバレーもないが)といった、下積み感いっぱいの活動を言うにとどめてほしいものである。(CAS)