アブラムシ(油虫)とは、アブラムシ科の昆虫で、その種の中には、草木の汁を吸って甘い蜜のような排泄物を出し、それをアリなどがしゃぶりに来るという習性を持つものがあり、アリが群がるところから「アリマキ」とも呼ばれている。尻から蜜を出してアリを寄せるなんて、人間に置き換えてみればとてもいやらしい虫である(人間に置き換える必要があるのかという疑問と、アブラムシがいやらしいのか、それをしゃぶりに来るアリがいやらしいのかという疑問は残るが)が、アブラムシの習性は単に趣味が高じたものというわけではなく、甘い蜜をアリに与えることで、アリを用心棒として雇い、テントウムシなどの天敵から身を守ってもらうねらいがあるのだという。アリを頼りにするくらいであるから、アブラムシはよほど弱い虫であることがわかるが、考えてみれば、アリより強い用心棒を募集したら、分泌物どころかまるごと食われてしまう可能性があるので、契約を遵守しそうなアリがちょうどよい相手なのかもしれない。
ところで「アブラムシ」といえば、江戸時代以降ごく近年までわれわれは、「ゴキブリ」のことをそう呼んでいた。これはアブラギッシュな虫という意味で、黒光りした外観からそのように呼ばれていたのであろう。昭和32年新訂版の『大言海』を見ても、「アブラムシ」は「ゴキブリ」のこととされ、現在の「アブラムシ」は「アリマキ」の項目で紹介されている。いずれにしても「アブラムシ(アリマキ)」は存在感の弱い虫であることは確かである。(CAS)