アドリブ(ad lib)は、ラテン語ad libitum(お好きなように)の略。演劇やテレビの生番組などで、出演者が脚本や台本にないセリフを言ったり、行動をとったりして、共演者やスタッフをおおいにあわてさせることをいう。もっとも、通常のアドリブは演劇やテレビのルールの範囲内で行われるので、関係者の冷や汗をよそに、なにごともなかったかのように事態は進行する。しかし、その本人が危険な思想の持ち主であったり、裸になるしか芸のない芸人だったりすると、周囲はマイクの音を消したり、見てはいけないところを隠したりと、もうてんやわんやである。
アドリブは、音楽では即興演奏のこと。モダンジャズでは、原曲と原曲の間に長々と演奏される即興を、インプロヴィゼーション、インプロヴァイゼーション(improvisation)といい、「思いつきでやってみました」的な「アドリブ」と区別している。
クラシック音楽では、協奏曲などで独奏者がご自慢の腕を披露するために挿入される独演部分をカデンツァといい、本来はアドリブ演奏を許容した部分だが、現在は過去の有名な独演者の演奏を踏襲するのを習いとしている。したがってクラシック音楽においては、わけのわからない現代音楽を除いては、基本的には楽譜に沿った演奏がなされていると考えられる。もっとも同じ楽曲なのに、おかしな間合いで演奏されたり、演奏に合わせてうなり声をあげたりするヘンな演奏者の行為を、アドリブと言えば言えないことはない。(CAS)